朝鮮学校の日常を描く秀作――『トロフィー』
- 昌親 谷

- 8月9日
- 読了時間: 2分
在日コリアン3世である孫明雅(ソンミョンア)監督の長篇第一作だが、秀作と言える出来である。朝鮮学校に通う女子生徒であるソヒの日常を淡々と描いているが、それがむしろこの映画の特徴となっている。朝鮮学校が舞台となっているからといって、ことさらに差別や軋轢をテーマにするのではなく、むしろ朝鮮学校やそこに通う生徒の家庭の日常が映し出されるからだ。
それでいて、ソヒがK-POPアイドルのライブチケットを買うために、父親が持っていた祖国・北朝鮮のCDをまずは売り始め、それがうまくいったことで勲章まで売りに出してしまうといったエピソードや、ソヒが学校の部活で力を入れている朝鮮舞踊をめぐる展開が縦軸となり、作品としてのしっかりとした背骨もある。
さらに、孫明雅監督は、是枝裕和監督や西川美和監督が率いる制作会社「文福」の所属であり、この『トロフィー』は、他の「文福」の作品同様、商業主義に走らず、社会的な問題にも目配りのきいた、きわめて良心的な作品でもあると言えるだろう。
そのように優れた作品であり、実際、評判もいいのだが、ある種の物足りなさを感じてしまう。行儀よく、小ぢんまりとまとまってしまっている、といった印象なのだ。もちろん、ある種の破綻だとか、なにか突出した部分をあえて入れることなどまずできないし、そうしてほしいわけでもない。物語やテーマに収まりきらない、そこからはみ出すようにかもしだされる空気感のようなものがほしいと思うのだが、それはないものねだりということになるのだろうか。
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