top of page

朝鮮学校の日常を描く秀作――『トロフィー』

  • 執筆者の写真: 昌親 谷
    昌親 谷
  • 8月9日
  • 読了時間: 2分

 在日コリアン3世である孫明雅(ソンミョンア)監督の長篇第一作だが、秀作と言える出来である。朝鮮学校に通う女子生徒であるソヒの日常を淡々と描いているが、それがむしろこの映画の特徴となっている。朝鮮学校が舞台となっているからといって、ことさらに差別や軋轢をテーマにするのではなく、むしろ朝鮮学校やそこに通う生徒の家庭の日常が映し出されるからだ。

 それでいて、ソヒがK-POPアイドルのライブチケットを買うために、父親が持っていた祖国・北朝鮮のCDをまずは売り始め、それがうまくいったことで勲章まで売りに出してしまうといったエピソードや、ソヒが学校の部活で力を入れている朝鮮舞踊をめぐる展開が縦軸となり、作品としてのしっかりとした背骨もある。

 さらに、孫明雅監督は、是枝裕和監督や西川美和監督が率いる制作会社「文福」の所属であり、この『トロフィー』は、他の「文福」の作品同様、商業主義に走らず、社会的な問題にも目配りのきいた、きわめて良心的な作品でもあると言えるだろう。

 そのように優れた作品であり、実際、評判もいいのだが、ある種の物足りなさを感じてしまう。行儀よく、小ぢんまりとまとまってしまっている、といった印象なのだ。もちろん、ある種の破綻だとか、なにか突出した部分をあえて入れることなどまずできないし、そうしてほしいわけでもない。物語やテーマに収まりきらない、そこからはみ出すようにかもしだされる空気感のようなものがほしいと思うのだが、それはないものねだりということになるのだろうか。


公式サイト

 
 
 

最新記事

すべて表示
小舟とともに滑走する映画——『大統領のケーキ』

深刻な食糧不足に苦しむ1990年代のイラクが舞台。教室でのくじ引きで、独裁者フセイン大統領の誕生日を祝うケーキを作る係に選ばれてしまったラミアは、市場に行って、なんとか材料を手に入れようとする。親友のサイードが手助けするが、まだ小学生のふたりでは思うようにいかない。ラミアは祖母と暮らしてきたが、その祖母が糖尿病でもう孫娘の面倒をみられなくなったという事情もある。  ときおり当時の記録映像なども挿入

 
 
 
アンデス山脈とサッカー——『雲と大地のはざまで』

映画の冒頭から画面に映し出されるアンデス山脈の雄大な景色が印象的だ。その景色を背景に、少年がアルパカの放牧をおこなっている。そして、その遊牧地に接して広がる湖は豊かな水をたたえているが、その水が採掘会社の進出で汚染されつつある。要するに、自然と文明、伝統と進歩のあいだの軋みという昔ながらの問題が、この奥地の村にも生じてきているのである。  スペイン語ではなく、ペルーの公用語の一つであるケチュア語を

 
 
 
『詩人iidabii』と『声をあげるということ』

あまり間隔をあけずに、2本のドキュメンタリー映画を観た。  一本は、いわゆる宗教2世であり、朗読詩人でもある人物を3年間にわたって取材した『詩人iidabii ある宗教2世の記録』。  もう一本は、2019年に性犯罪事件について無罪判決が続いて出たことに反発して起きた「フラワーデモ」や「#With You」の運動のなかで中心的な役割を演じた複数の人物を取材した『声をあげるということ——性犯罪 刑法

 
 
 

コメント


© 2021 by MASACHIKA TANI. Proudly created with Wix.com

  • Facebookの - ホワイト丸
bottom of page